サガン鳥栖が考える“地域と気候アクション”
千年続く農業から学ぶ。
サガン鳥栖が考える“地域と気候アクション”
サガン鳥栖では、スポーツを通じて地域社会の課題解決に取り組む「シャレン!」活動を推進しています。 2026年3月11日、Jリーグの気候アクション研修として神奈川県横須賀市にある農園 SHO Farm を訪問し、環境再生型農業について学びました。 農業は食を支える産業であると同時に、環境や地域社会とも深く関わっています。 研修では、農業・環境・社会がどのようにつながっているのかを学びながら、スポーツクラブとして地域の未来にどのように関わっていくことができるのかを考える機会となりました。
REPORT

「千年続く農業」を掲げるSHO Farm
SHO Farmは「千年続く農業」という理念を掲げる農園です。
2014年に仲野晶子さん・翔さん夫妻が開園し、現在は約3.4ヘクタールの農地で100種類以上の野菜や穀物を栽培しています。農園では鶏も飼育されており、畑の中で循環する農業が実践されています。
環境再生型農業(Regenerative Agriculture)という考え方を大切に取り組まれています。
・栽培期間中農薬不使用
・不耕起栽培(畑を耕さない)
・地域資源を活かした循環型の農業
こうした方法を通じて、農業生産と環境再生を同時に実現することを目指しながら、プラスチック資材を極力使わない取り組みや、新聞紙を活用した無包装販売なども行われており、環境負荷を抑える工夫が日常的に行われています。


日本の農業の現状


日本の農業の現状についても学ぶことができました。
現在、日本では農業従事者の減少と高齢化が進んでおり、農業人口は総人口の約1%程度とも言われています。農地面積も減少しており、食料自給率(カロリーベース)も依然として低い状況が続いています。
業は単なる一次産業ではなく、地域の文化や景観、食の安全を支える重要な役割を持っています。農業をどのように持続可能な形で次世代につないでいくのかは、日本社会全体の課題でもあります。
気候変動と農業
近年、気候変動の影響は農業にも大きく現れています。
豪雨や干ばつなどの異常気象が増え、農作物の生産にも影響が出ています。また、食料システム全体は世界の温室効果ガス排出量の約3割を占めるとも言われています。
一方で農業は、気候変動対策の可能性を持つ産業でもあります。
土壌には大気中の約2倍、植物の約3倍の炭素が蓄えられているとされており、健全な土壌を育てる農業は、炭素を地中に戻す役割を持つとも言われています。
再生型農業という考え方

再生型農業では、土壌の健康を回復させることが重要とされています。 そのために大切にされている基本原則は、次の5つです。
1 土をかき乱さない(不耕起)
一般的な農業では畑を耕して作物を育てますが、耕すことで土の中の微生物や菌類がつくるネットワークが壊れてしまうことがあります。不耕起栽培では、できるだけ土を掘り返さずに作物を育てることで、土壌の生態系を守りながら土の力を高めていきます。
2 土を覆う
むき出しの土は、雨や風によって流されやすく、乾燥もしやすくなります。そこで、作物の残さや草、カバークロップ(被覆植物)などで土の表面を覆い、土壌を守ります。
これにより、水分保持や微生物の活動を促す環境が整います。
3 多様性を高める
単一の作物だけを育てるのではなく、複数の作物を組み合わせたり、季節ごとに異なる 作物を育てたりすることで、土壌生態系の多様性が高まります。多様な植物が存在することで、微生物や昆虫なども豊かになり、農地全体のバランスが保たれます。
4 土の中に生きた根を保つ
植物の根は、土壌の微生物と密接に関係しています。根から分泌される物質は微生物の栄養となり、微生物は植物が利用できる形で栄養を循環させます。できるだけ畑に植物が育っている状態を保つことで、土壌の生命活動が継続します。
5 動物を組み込む
再生型農業では、家畜などの動物も農業の循環の中に取り入れます。動物のふんは土壌の栄養となり、また草を食べることで植物の成長サイクルを促す役割も果たします。植 物・土壌・動物が循環することで、自然に近い生態系がつくられます。
こうした取り組みは、土壌の中に炭素を蓄える「炭素固定」にもつながると考えられており、気候変動対策としても注目されています。
農業は環境に負荷を与える産業として語られることもありますが、同時に環境を再生する力を持つ産業でもあります。
SHO Farmでは、こうした自然の仕組みを活かしながら土壌を育てる農業が実践されています。
スポーツと気候アクション

スポーツ界でも、気候変動への取り組みが広がっていて、サガン鳥栖では環境活動の一環として「SAGANゼロカーボンチャレンジマッチ」を佐賀県(脱炭素社会推進課)と連携して開催しています。
試合開催に伴うCO₂排出量の可視化や、来場手段の調査などを通じて、サポーターとともに気候変動への理解を深める取り組みを行っています。
多くの人が集まるスポーツイベントだからこそ、環境への意識を広げるきっかけをつくることができると考えています。
サガン鳥栖が目指す未来
サガン鳥栖ではホームゲーム以外にも、スタジアムを起点にしたさまざまな環境活動の可能性が広がってきています。
例えば
・学校給食と連携した食育活動や、将来的なオーガニック給食への取り組み
・スタジアムで使用するリユーザブルカップの活用による使い捨てプラスチック削減
・スタジアムで使用された紙コップを資源として回収し、コピー用紙やトイレットペーパーなどへ再生する循環型の取り組み
・徒歩や公共交通機関での来場を促し、CO₂排出削減につなげる取り組み
・サポーターと行うスタジアム周辺のゴミ拾い活動「LEADS TO THE OCEAN」
・鳥栖市産いちご「いちごさん」を活用したクラフトビールなど、地産地消の取り組み(規格外いちごの活用による食品ロス削減と地域産業の支援)
・地域農業と連携したオーガニック茶栽培などの学び
・応援フラッグを間伐材で制作するなど、地域の森林資源を活かしたグッズづくりへの挑戦
こうした取り組みは、スタジアムの中だけで完結するものではなく、地域の農業や教育、環境活動とつながることで、さらに大きな価値を生み出していく可能性があります。

研修に参加して

今回この研修に参加した理由の一つは、自分自身がこれまで取り組んできた活動と重なる部分が多いと感じていたからです。
サガン鳥栖の活動の中でも、地域の農業、食育、資源循環、スタジアムでの環境活動など、「地域と環境のつながり」を意識した取り組みに関わる機会が増えてきました。そうした中で、自分の中では感覚的に「こういう方向が大切なのではないか」と思いながら行動してきた部分も多くあります。
だからこそ、その感覚がどのような考え方や理論に基づいているのかを学び、しっかりと理解したいという思いがありました。また、自分が学ぶことで、その取り組みの意味や価値を周囲に伝えやすくなり、クラブや地域の中で理解してくれる仲間を少しずつ増やしていくことにもつながるのではないかと考えています。


今回の研修を通して、これまで自分が感じていた方向性と重なる部分が多くあることを実感すると同時に、新しい視点やヒントもたくさん得ることができました。
SHO Farmが掲げる「千年続く農業」という考え方は、自然の循環の中で社会を成り立たせていくという大きな視点を示してくれています。スポーツクラブであるサガン鳥栖も、地域とともに長く続く存在でありたいと考えています。
だからこそ、地域の農業や環境とつながりながら、未来につながる取り組みを少しずつ積み重ねていきたいと思います。
社会連携部 井上裕介




